夫婦共依存カウンセリング

夫婦共依存とは、夫婦間で過度に依存し合い、自立できていない状態のことです。相手の承認や要求にひたすら執着し、自分自身の欲求や感情を抑圧してしまうのが特徴。夫婦共依存は、健康や心理的な問題を引き起こす原因となることがあります。

目次

夫婦共依存とは

夫婦共依存は、お互いが強く依存し合う関係です。

夫婦が円満に結婚生活を送るには、相手を尊重することが大切です。しかし夫婦共依存に陥ると、相手を尊重するどころか寄りかかって束縛し、他方はそれを懸命に支えながら苦しみます。幸福感は薄いのにも関わらず、その状態から抜け出せない状態です。

夫婦が共依存関係に陥ると、夫婦の一方が他方に精神的に依存し、もう片方がその依存を助長するようになります。尽くす側は相手の要求に応えることで生き甲斐を感じ、尽くされる側は満足感を得ますが、この関係が続くと問題のある行動や状況が維持され、不満やストレスを引き起こすのです。

例えばアルコール依存症の夫をもつ妻は、暴力や暴言を受けながらも夫を献身的に支え続け、尽くすことに自分の存在価値を見出します。一方、夫は「妻とはこうあるべきだ」「妻なら分かってくれるはず」といった固定観念や甘えを押し付け、さらに「もっと、もっと」とわがままな要求をエスカレートさせるばかりです。

このような共依存関係は、尽くす側が心的ストレスを抱え以下のような、さまざまな心身の不調を引き起こします。

  • うつ状態
  • 無気力
  • 集中力欠如
  • 過食
  • パニック
  • 偏頭痛など

しかし多くの場合、本人は原因を理解できず、まさに骨折しているのに気づかず歩き続けるような状態です。

夫婦共依存は一見利害が一致しているように見えますが、実際には双方にとって非常に不健康な関係であり、離婚や生活の崩壊といった深刻な問題を引き起こす危険性があります。

夫婦共依存のパターン

夫婦共依存には4つのパターンがあります。

A1.  わがままかもしれないが、パートナーもつらいのだからなんとか対応してあげたい
A2.パートナーの苦しみを理解できるのは自分だけ、一緒に苦しみを分かち合いたい
B1.   パートナーとは別れたほうがいいと思うが、優しいところもあるので離れる決心がつかない
B2.パートナーの苦しみは甘えだと思うが、理解を示さないと相手が納得しない

A1・A2は夫婦関係に対し「無自覚な共依存のパターン」、B1・B2は「自覚がある共依存のパターン」です。

特にB1・B2は「パートナーとは別れたほうがいい」「パートナーの苦しみは甘えだと思うが」と、良くない関係に気づいているにもかかわらず関係を断つことができません。無理に相手の良いところを見つけ、仕方なく受け入れてしまうなど、現実から逃避する傾向があります。

現実から目をそらし続けるのですから、A1・A2の「無自覚な共依存のパターン」と本質的には変わりありません。

また尽くす側は「優しい人」「よく頑張っている人」「気が利く人」と評価され、苦しさに気付かれにくい傾向があります。周囲から夫婦共依存を指摘されることはないと言っても過言ではありません。

しかし、いくら頑張って尽くしたとしても報われることはなく、生きづらさは増すばかりです。まずは「夫婦共依存」を自覚して解決に向かう勇気を出さない限り、夫婦の「支配と服従」の関係は悪化の一途をたどるでしょう。

夫婦共依存の特徴

夫婦共依存の特徴には以下のものがあります。

  • 夫婦の揉め事や喧嘩が多い
  • 夫婦のどちらかに暴力や暴言がある
  • よくトラブルを起こし、相手を困らせる
  • 相手に同調や共感を強く求める傾向がある
  • 相手が友人や実家と関わることを快く思わない
  • 相手に約束をさせたがり、必要以上に約束にこだわる
  • 自分がどう思われているのかを常に気にして確認したがる
  • ご近所や友人から夫婦としてどう見られているかを気にする
  • 親しい友人がおらず、仕事以外はいつも相手のそばにいたがる
  • 夫婦のどちらか、または両方が愛情に不安を感じている事が多い
  • 「いつ・どこで・誰と・何をする」など行動を把握し、コントロールしたがる

上記のような状況が当てはまっても、夫婦が仲睦まじくお互いに尊重し合い、あなたの身体も精神も良い状態であれば問題ないかもしれません。しかし、心身に何かしらの不調を感じるようであれば、それは大きな問題となります。

夫婦は元々一人の人間です。一人ひとりが自立する中で二人が惹かれ合い、お互いを尊重し合いながら生活を共にするのが理想です。しかし、上記のような不健全な依存関係と支配が日常茶飯事であれば、いつ何らかの形で不具合が生じても不思議ではありません。

不具合が起きるのはパートナーだけが悪いわけでなく、問題のある相手に尽しすぎるあなたにも、実は大きな問題が隠れているのです。

無自覚に共依存を生む「尽くしすぎる人」の特徴

無自覚に共依存を生む「尽くしすぎる人」には、以下のような特徴があります。

  • 相手が何を考えているか、つい先回りして考えてしまう
  • 相手が喜んでくれると、自分のことのように嬉しく感じる
  • 自分の意思をあまり持たず、相手の感情や言動に左右される
  • 「ああだ、こうだ」と指示されることにあまり抵抗を感じない
  • 相手に尽くすことが何よりも自分の愛の証であり、生き甲斐だと感じる
  • 自分で物事を決めることが難しく、できれば相手に決めてほしいと感じる
  • 自立する自信がなく、相手の経済力に頼らなければ生きていけない気がする
  • 自分のことは後回しにして、相手が求める援助や行動を必要以上に優先する
  • 相手の喜ぶことなら、多少我慢してでもできる限りのことをしてあげたいと思う
  • 「コレはこうだろ、アレはああだろ」と言われると無批判に受け入れ従ってしまう
  • 強い語気で非難・否定されても、私のことを思って言ってくれたと考えてしまう
  • 相手の意に沿わないと、嫌われたり別れを切り出されたりするのではないかと不安になる

「何とかして相手のためになりたい」「一番の理解者として気持ちを分かってあげたい」と思い、精一杯、献身的に尽くします。尽くすことは一見美しい愛情のように思えますが、尽くしすぎると自分を犠牲にし続けることになり、心身ともに疲弊してしまいます。

なぜ出会った頃や新婚時代のような、思いやりのある生活が消え去ってしまったのでしょう。

それは、現在の夫婦関係の在り方に問題があるからではないでしょうか。

共依存を助長する心理とその危険性

パートナーに問題があっても「私さえ我慢すれば」「私だけがこの人を救える」「この人の理解者は私しかいない」と思ってひたすら耐えてしまう…

このような状態は、健全な夫婦関係・恋人関係からは程遠く、非常に危険です。

アルコール依存症やDVに苦しみながら支え続ける妻や夫、恋人たちはこの危険な心理状態に陥っています。支える側は相手から傷つけられ続けてきたため自己肯定感が低く、相手に尽くすことでしか自分の価値を見出せません。

相手から被害を受けても「本当は私を思ってくれている」「きっと昔の優しい彼に戻るはず」と信じ、支え続けます。特に夫婦の場合、たとえ世間的にダメ夫やワガママ放題の妻であっても、将来を誓った相手として見捨てられないケースが多いです。

その結果、夫の暴力や横暴、妻からの現実的ではない要望に、つらい思いをしながらも延々と耐え続けます。

問題を起こす側は依存がますます強くなり、人生を崩壊させてしまう可能性もあります。支え続ける側も苦しい日々から抜け出せなくなってしまうでしょう。

「構ってもらいたい」と「構わずにはいられない」二人の間で「あなたがいなければ生きていけない」という泥沼化した危険な関係性が生じます。

【カウンセリング事例】夫の顔色をうかがってばかりの専業主婦

Cさんは専業主婦です。「夫の稼ぎで養ってもらっている」という強い隷属意識があります。

隷属意識のため常に夫の顔色をうかがい、機嫌を損ねないように気を遣うので、生活を楽しむことができなくなってしまいました。自分で働いて収入を得ることも考えてはいるものの、長年家にいたことで社会に復帰することに及び腰になり、就職活動もしないまま日々が過ぎていくという状況です。

しかし、夫は妻が自分の顔色をうかがうばかりの主従関係ではなく、もっと対等に話し合える関係を望んでいました。一方で妻は「自分は養われている身の上だから」と遠慮し、壁を作ってしまいます。お互いに意見を言う機会もなく不満を募らせていました。

家事はすべて妻がこなしていたため、夫婦の間には「家事ができない夫」と「経済的自立に不安を感じる妻」という利害関係が成り立っています。一見、役割分担をしているようにも見えますが、お互いに不満を抱えており、コミュニケーションが上手く取れていないことが問題になっていました。

こちらのケースではカウンセリングを通じて、夫婦の意識の転換を図りました。やがて妻は少しずつ自信を取り戻し、外の世界へ歩み出すようになります。夫とも対等に話ができるようになり、その結果、夫婦のコミュニケーションが改善されました。

今回の場合は、夫にモラハラやDVなどの大きな問題はありませんでしたが、妻の自信のなさからくるコミュニケーションのずれが、夫婦間にイライラをもたらす原因となっていました。

DV・モラハラ夫に耐える妻の心理

DVやモラハラ行為を行う男性は一定数存在し、そんな男性と離婚をせずに耐え続ける女性も多いです。

もちろんDVやモラハラ行為をする方が悪いのですが「そんな夫でも見切りをつけず耐え忍び、支えられるのは自分だけ」と思い込み、悪い関係性を助長している妻にも問題があります。

DVやモラハラをされるのは自分が悪いと考え、そんな相手でも愛しているから一緒にいるべきだと信じていますが、実際には支配関係によって心も体もボロボロになっていることが多いのです。

また離婚が自分にとって不利益になると考え、共依存の状態を抵抗せず受け入れている場合もあります。

不健全な支配関係に不満や不安を感じたり、心身に不調を感じたりするなら、関係を見直すことが必要です。

実は共依存に陥りやすい人の多くには、自ら問題のある人を選ぶ傾向があります。自己評価が低い人ほど、相手に必要とされることで自分に価値を見出すため、無意識にダメンズやダメ男と呼ばれる人を選んでしまうのです

共依存に陥りやすい人の傾向「自信のない人が好き」

共依存に陥りがちな人は自信のない、頼りない感じのパートナーを好む傾向があります。パートナーが自信をもって何かに取り組むことを好まず、友人と積極的に交流することにも抵抗を示します。特に友人の中に異性がいる場合はなおさらです。

共依存に陥りやすい人は、自立した精神をもったパートナーではなく、自分だけに頼って生きているようなパートナーを望みます。まるで「私がいるおかげであなたの存在が成り立つ」という状況に酔っているかのようです。その結果「あなたがいなければ生きていけない」「常にあなたのそばにいて支えたい」といった極端な思いや関係性が生まれます。

もしパートナーが強い依存関係を求めてくることで、自分が疲れたり傷ついたりする場合には、関係を見直す必要があります。パートナーと距離をとることや、相手の問題と自分の問題を混同しないように境界線を引くことを考えましょう。

また「パートナーを支えることだけが生きがい」などの共依存に陥らないためには、自分の幸せを後回しにせず、相手のことを最優先にしすぎないことが大切です。相手の甘えや支配によってコントロールされないようにしましょう。

夫婦共依存から脱出するコツ

コントロールしない、相手の好きにさせる

夫婦や恋人関係、どのような関係性においても相手をコントロールし支配しようとする意識は、人間関係を壊し相手を苦しめる結果になります。

相手の考える力を奪い、自分の意見を強引に押し通すことは、相手にとってつらいものです。健全な関係を築くためには相手の意見を尊重し、その上で自分の気持ちを伝えることが重要です。

例えば、自分が同じようなつらい体験をすれば、相手もこんな気持ちになったのかなと相手の気持ちを理解することができます。また相手ばかりに依存せずに、趣味や勉強・仕事に時間を使うことで、自分の時間を楽しむことができます。自分を振り返る時間をもつことにより相手への対応が変わり、思いやりのある関係を築くことができるでしょう。

相手をコントロールしようとせず、それぞれが自分の時間を楽しみながら相手を尊重することで、健全で楽しい関係が築けるのです。

自分主導の人生を生きる

尽くすタイプの共依存に陥っている人は、自分勝手に生きるくらいでちょうど良い場合があります。

束縛してくるパートナーはあなたのことは考えず、自分の欲求を満たすために行動しています。無理に合わせる必要はなく、自分の意思を持って自立して生きることが重要です。

「相手は相手」「自分は自分」というスタンスで、パートナーとの関係を考えましょう。いつも一緒にいる必要はありません。自分にマイナスになると感じたら距離を置くことも必要です。

お互いに尊重し合い、お互いの個性を楽しめる関係を築くためには、自立して自分主導の人生を生きることが大切です。自立した人には自由があり、共依存には不自由な拘束があります。そろそろ夫婦共依存から卒業しましょう。

おわりに

今一度、夫婦関係や恋人との関わりを見つめ直し、自分に問いかけてみましょう。以下のような思いこみはありませんか?

  • 私はパートナーの経済力に頼っており養ってもらっている
  • 苦しんでいるパートナーを私が救わなければならない
  • 私にとってパートナーが人生の全てである

夫婦共依存から脱出するためには、自分自身の幸福を見直すことが何より大切です。

常に相手の顔色を伺い自分の意見を我慢していると、自分が何をしたいのか分からなくなり、パートナーに振り回されるだけの人生になってしまいます。自分の人生において、自分が脇役になってしまっていることに気づきましょう。夫婦共依存の克服は、まずその「自覚」から始まります。

大阪聖心こころセラピーでは、夫婦共依存から脱却し、人生の主人公である自分を取り戻すためのプログラムを用意しております。自分自身の幸福と主体性、他人に浸食されない精神と尊厳を取り戻しましょう。

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