親子共依存カウンセリング

近年「仲良し親子」が増えている一方で、その親密さの度合いが行き過ぎ「親子共依存」に陥ってしまうケースが増加しています。一見良好に見える親子関係の裏に潜む「親子共依存」の落とし穴と、そこから抜け出すためのヒントを探ります。

目次

親子共依存とは

親子は、かけがえのない絆で結ばれた存在です。

しかし、愛情が行き過ぎると「親子共依存」という名の見えない鎖に縛られてしまうことがあります。

本来、親は子の成長を見守り、巣立ちをうながす存在です。

しかし、共依存では親が「こうあってほしい」という過剰な期待や価値観を押し付け、子供を支配しようとします。

一方、子供は親からの愛情や承認を求め、必死に期待に応えようと努力します。

「認められたい」「褒めてほしい」「喜んでもらいたい」と一生懸命がんばりますが、親の要求はますます高くなるばかりで満たされることがありません。親の過剰な期待や支配はいつしか深い傷となり、心に重くのしかかります。

親子共依存では子供が心的ストレスを抱え、以下のようにさまざまな心身の不調を引き起こします。

  • 常に人の顔色を気にして萎縮
  • 頭痛や腹痛
  • うつ状態
  • 摂食障害
  • 問題行動
  • 不登校
  • ニートやひきこもり

しかし、多くの人は生まれてからの生活環境が当たり前だと感じているため、自分の不調の「原因」が何なのか理解できません。

親子共依存は一見利害が一致しているように見えますが、実際には双方にとって非常に不健康な関係であり、深刻な問題を引き起こす危険性があります。

親子共依存のパターン

親子共依存には4つのパターンがあります。

A1. 親も大変なのだから、愚痴や不満を聞いてあげるのは子供として当然だ
A2. 親は親なりに一生懸命育ててくれているのだから、親の期待に応えなければいけない
B1. 親の愚痴を聞くのは嫌だけれど、私が聞いてあげれば丸く収まる
B2. 私は○○したいけど、親の言う△△にしておけば親の期待に背かないし、まず間違いないだろう

A1・A2は親子関係に対し「無自覚な共依存のパターン」、B1・B2は「自覚がある共依存のパターン」です。

特にB1・B2は「親の愚痴を聞くのは嫌」「私は○○したい」と、苦痛に感じていることや自分の願望があるにもかかわらず、親を優先して自分の意思を通すことができません。親子の関係を壊したくないために、仕方なく親の考えを受け入れてしまう傾向にあります。

親を優先し続けるのですから、A1・A2の「無自覚な共依存のパターン」と本質的には変わりありません。親も子もお互いに自立することはできないでしょう。

子供自身の気持ちを抑えて問題から目を背け、親を優先した人生を送っている限り「親の言うことをよく聞くいい子」として見られます。

しかし、大人になっても親が中心の生活をしていたのでは、自立できず生きづらさは増すばかりです。

しつけを大きく逸脱して親が子供を支配し、子供が親に服従する関係こそ「親子共依存」なのです。

まずは「親子共依存」を自覚して解決に向かう勇気を出さない限り、親子の「支配と服従」の関係は悪化の一途をたどるでしょう。

親子共依存の特徴

親子共依存の特徴には以下のものがあります。

  • あなたが良い成績を取ると、親はあなた以上に喜んでいた
  • あなたの親は自分の夢をあなたに託し、大きな期待を寄せていた
  • あなたの親は青年期になっても、あなたの服を選んで買い与えていた
  • あなたの親はピアノ・バレエ・英会話・絵画など、多くの習い事を勧めていた
  • あなたの親はあなたの1日のスケジュールを細かく把握し、管理したがっていた
  • あなたの親は常にあなたに話しかけ、あなたは親の良き理解者の役割を果たしていた
  • あなたの親はあなたが親の言うとおりにしないとすぐに怒り出し、感情的になっていた
  • あなたの親は進学・就職・恋愛・結婚などに対して、頻繁に助言や誘導、干渉をしていた

上記のような状況が当てはまっても、あなたの身体も精神もすこぶる良い状態であれば問題ないかもしれません。

しかし、心身に何かしらの不調を感じるようであれば大きな問題です。

子供は生まれてから物心がつくまで、親なしでは生活できません。「食事をとる」「ぐっすり眠る」「運動する」「衛生的に過ごす」など、毎日の基本的なことをすべて親に頼っています。

しかし、いつかは一人の人間として親から独立し巣立っていきます。上記のような不健全な支配と干渉がいつまでも続くのであれば、いつ何らかの形で不具合が生じても不思議ではありません。

不具合が起きるのは親だけが悪いわけではなく、問題のある親に依存しすぎるあなたにも、実は大きな問題が隠れているのです。

無自覚に共依存に陥る子供の特徴

無自覚に共依存に陥る子供には、以下のような特徴があります。

  • 親に育ててもらった恩を強く感じている
  • 親を喜ばせることが、自分の喜びにもなる
  • 親が落ち込むと、自分も一緒に気分が沈んでしまう
  • 常に親の機嫌を気にして、怒らせないように気を使う
  • 親の愚痴は、自分が聞き役になって支えなければと感じる
  • 自分の気持ちを一番理解してくれるのは親だと感じている
  • 自信がなく、親がいないと生活面でも精神面でも不安になる
  • 進学や就職、考え方なども、親に相談しないと決められない
  • 結婚相手は親が承認した人でなければならないと考えている
  • 結婚しても実家の近くに住んで、親と密接に関わり続けたい
  • 自分のやりたいことより、親が望むことで認められたいと思う
  • 親の言うことを聞かないと、嫌われるのではないかと心配になる
  • 親が「こうだ」と言うと、疑問を持たずにそのまま受け入れてしまう
  • 親に言われたことを実行するのは平気だが「自分で決めて」と言われると困る
  • 親が細かく指図したり厳しい言い方をしたりしても、自分のためだと受け止める

子どもが何かを成し遂げるたびに褒めて喜ぶ親。さらに応えようとがんばる子供。親の喜びが増すにつれ期待も高まります。

この繰り返しにより親の要求は次第にエスカレートし、子どもにとって重荷となり、時には無理難題に感じることもあります。

しかし、子供自身はこの状況に気づかないことが多いです。親を喜ばせたい、期待に応えたいという一心で、一生懸命「良い子」であろうと努力します。

「良い子」として親の気持ちを汲み取り、期待に応えようとする中で心労が増して自信を失うなど、逆に子供の状況は悪化していきます。

このような関係性は、健全な親子のあり方とは言えません。 

共依存を助長する心理

親が子供を大切に思い、世話をすることは当然のことです。

しかし、過度な世話や教育は、実は母親の「子育て依存」の症状である可能性があります。「子育て依存」は子供の自立を妨げる恐れがあるのです。

例えば、子供が友人関係で悩んでいるとき、親が「お母さんが言ってあげる」「あなたのためを思ってやってあげる」と直接介入してしまうケースがあります。

一見、子供のためを思った行動に見えますが、実際には親自身の不安や心配を解消するためであることが多いです。

また、共依存を助長する心理的背景には「この子は私なしでは何もできない」という親の無意識の思い込みがあります。子供への信頼感はありません。実際には親が「信頼できないダメな子供」に依存し「ダメな子をがんばって育てている私」という自己像に自分の存在価値を見出しているのです。

しかし健全な親子関係では、親は適度な距離を保ちながら子供を見守り、子供の自立と成長をうながすことが大切です。子供は自分を信頼して見守ってくれる親の愛情を感じた時に「やってみよう」という自発性が芽生えます。

過保護になりすぎず、かといって放任でもない、信頼に裏付けられたバランスの取れた子育てが子供の健やかな成長につながるのです。

 子供への影響

「愛情」の名のもとに親に支配され、過度に世話をされた子どもは、以下のように成長とともに深刻な精神的影響を受ける可能性があります。

  • 自主性や決断力の欠如
  • 親の価値観への過度の依存
  • 親子の境界線の曖昧さ

成人して社会に出ても、以下の傾向が見られます。

  • 他人の意見に振り回されやすい
  • 常に迷いと不安を感じる
  • 決断力に欠ける

さらに親子共依存の関係が成人後も続くことで、自立への罪悪感や親からの分離不安など、様々な問題を引き起こすのです。

精神的に自立のできない状況は、将来の人間関係にも影響を及ぼします。

親子共依存の子供は、恋人や結婚相手、友人を選ぶ際も無意識のうちに指導者や支配者のような存在を求めがちです。

結果として、親との共依存から抜け出せても、別の人との間で同じような共依存関係を築いてしまい、生涯にわたって共依存の問題を抱え続ける可能性があります。

健全な自立と主体性の発達には、適切な親子関係が大切なのです。

本当に子供のため?

「子供のため」という名目で親の希望を押し付けることは、子供の個性と自主性を損なう可能性があります。

子供には子供の人生があります。子供の人生を尊重し、自分のことは自分で決める機会を与えることが大切です。

例えば、学校に行きたくない子供に対して強制するのではなく、まずは子どもの意思を尊重し見守る姿勢を示すべきです。罰や褒美で対処する発想や、不安をあおる言動は避け、子どもに安心感を与えましょう。信頼関係を築いた上で、ゆっくりと状況の改善を図ることが効果的です。

親子の信頼関係に基づいたアプローチにより、子供の自主性と自己決定力を育むことができます。

子供がしたいのか、親がさせたいのか

子どもの習い事や学業が、本当に自発的なものかどうかを見極めることが重要です。

親の誘導や期待に基づく活動は、困難に直面した際に「もう嫌だ」と感じやすく、続けることが難しくなります。子供が自分の意思で決めたことでも挫折しそうになることがある中で、親の期待に応えるだけの活動は想像以上に大きなエネルギーを要します。

子供の人生は子ども自身のものです。自分の意思で生きられないことは、モチベーション維持を困難にし、ネガティブな感情を生み出す可能性があります。

親としては、子供が自分のしたいことやがんばれることを自分で決めて取り組めるよう、多様な環境を提供して時に見守る姿勢を持つことが大切です。

子どもの「やってみたい」という気持ちを尊重し、それをサポートする親であることが望ましいです。

親の期待や願いよりも、子ども自身の思いを大切にすることで、子どもの自発性と主体性を育むことができるでしょう。

自分が主役の人生を生きる

自分が主役の人生を生きましょう。親の期待に応えようと必死になっている親子共依存の子供は、むしろ自分勝手に生きていくくらいでちょうど良い場合があります。

支配的な親は、往々にして自分の欲求を満たすためだけに行動しているので、それに無理に合わせる必要はありません。

「相手は相手」「自分は自分」という考え方を持ち、親子それぞれの時間を大切にしましょう。常に一緒にいる必要はなく、必要に応じて距離を置くことも悪いことではありません。

また、自分の人生の主役として、自分の意思で歩んでいくことも大切です。共依存関係は双方を不幸にする可能性があるため、互いに自立することが重要になります。自立した人生には自由があり、共依存には不自由な拘束があります。

自由は与えられるものではなく、自ら勝ち取るものです。親子共依存から卒業し自立した個人として生きていくことが、本当の幸せにつながるでしょう。

 親子共依存から脱出しよう

親への恩や義務感から、自分の思いを抑え、次のように親の期待に応えようとしていないでしょうか。

  • 親には今まで育ててくれた恩がある
  • 辛いことがあれば家族なのだからそれを共有するのは当たり前だ
  • 親は一生懸命育ててくれたから愚痴でも何でも受け入れてあげるべきだ

常に親の顔色を伺い自分の意見を抑えることは、長期的には健全な関係とは言えません。

大切なのは「あなたがどうしたいか」です。進学や就職、日常生活の決定を全て親に委ねていては、将来自立した決断ができず不安に怯えて生きることになりかねません。

共依存症の克服は「自覚」から始まります。自分の意思で生きることの重要性を認識し、他人によって浸食されない精神と尊厳を取り戻すことが大切です。

親はずっとそばにいるわけではありません。自分の人生の主人公として、地に足をつけて生きていくことが重要です。

大阪聖心こころセラピーでは、親子共依存から脱却する専門的なサポートが受けられます。自分自身の力で生きる健全な自己を取り戻し、本当の幸せを見つけていきましょう。

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