大人の愛着障害カウンセリング

大人の愛着障害とは、幼少期に養育者との愛着形成がうまくいかなかった結果、情緒不安定や対人関係の困難が生じる状態です。愛着障害の症状の一例として、原因不明の体調不良が現れるケースも。わけもなく生きづらさを感じている方は、大人の愛着障害を疑ってみる必要があります。

目次

大人の愛着障害とは

大人の愛着障害とは、幼少期、特に乳幼児期に母親をはじめとした養育者と適切な愛着関係を築けなかったために、成人後も対人関係や情緒面に困難を抱える状態を指します。従来、愛着障害は子どもの問題として捉えられてきましたが、近年では成人にも同様の症状が見られることが認識され「大人の愛着障害」として注目されています。

愛着とは、人格形成に不可欠な基盤であり、養育者との関係から築かれる心の絆です。この絆は深い信頼関係に基づく安心感によって形作られます。

生まれたばかりの赤ちゃんは、お腹が空いたり、オムツが汚れたり、不安を感じたりした時に泣くものです。親は赤ちゃんの泣き声に気付き、ミルクをあげたり、オムツを替えたり、抱っこして安心させたりします。こうした相互作用を通して、赤ちゃんは親との間に「愛着」と呼ばれる強い心のつながりを築いているのです。

愛着は、乳幼児期に形成されるものであり、その後の情緒や社会性の発達に大きな影響を与えます。安定した愛着関係を築いた子供は、自己肯定感や他者への信頼感を持つことができ、人間関係を築き社会の一員として生きていくための基盤を築くことができます。

一方、虐待やネグレクト、親の関わりが弱いなど愛着形成が十分に得られなかった子供は、不安や孤独感を感じやすく人間関係の構築や維持に困難を抱えることがあるのです。

愛着障害の子供は、以下のような特徴が見られます。

  • 無表情で笑わない
  • 幼稚園や保育園で友達と一緒に遊ぼうとしない
  • 所構わず大声を出したり激しく泣いたりして手が付けられない

上記のような状態を養育者が放置すると「大人の愛着障害」につながります。

大人の愛着障害を持つ人は、親密な関係を築くことに恐れを感じ、他者との信頼関係を維持するのが難しい場合があります。

また、感情のコントロールが難しく、過度な不安や怒りを感じることも多いです。信頼関係の形成や感情のコントロールの問題は、仕事やプライベートの人間関係において大きな影響を与え、社会生活にまで支障をきたすでしょう。

大阪聖心こころセラピーでは、こうした愛着障害へのカウンセリングも行っております。愛着障害に対する理解を深め、自分自身や周囲の人々の支援につなげていただければと思います。専門家のサポートを受けることで、より良い人間関係を築き、健全な社会生活を送るための第一歩となるでしょう。

大人の愛着障害の症状

幼少期に適切な愛着関係を築けなかったことが原因で、大人になってもさまざまな症状や特徴が現れるのが「大人の愛着障害」です。

具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

人間関係

  • 人間関係での衝突や誤解が生じやすい
  • 他人との距離感がつかめず、孤立したり過度のスキンシップを求めたりする
  • パートナーや子供をどう愛すればいいかわからない
  • 極端な反応や言動で相手を混乱させる

情緒面

  • 情緒が不安定で、常に虚無感や孤独感を抱えている
  • 傷つきやすく、些細なことで落ち込んだり怒ったりする
  • 過去の失敗や恐怖体験をいつまでも引きずる
  • 0か100かで物事を捉え、白黒はっきりさせないと気がすまない
  • 意地っ張りで、自分の非を認めにくい

自己認識

  • 自己肯定感が低く自信が持てないため、他人からの評価を過度に気にする
  • 周りからの期待に応えようと、自分の心を押し殺してまでも無理をしてがんばる
  • 優柔不断で決断に時間がかかる、または考えなしに決断して後悔する
  • アイデンティティが確立しておらず、将来への不安を抱えている

上記のように、大人の愛着障害を持つ人は、不安定で未熟なパーソナリティを持っていることが特徴です。

「生きづらさ」の症状が現れるのは、生まれつきの性格に問題があるせいではなく、ましてや何かの病気にかかったせいでもありません。育った環境や養育者との関わりに影響を受け、パーソナリティが不安定で未熟なまま大人になってしまった結果と言えるでしょう。

大人の愛着障害を克服するには、不安定で未熟なパーソナリティを少しずつ変化させていくことが大切です。自己理解を深め適切な対人関係スキルを学ぶことで、生きづらさを克服し、より充実した人生を送ることができるようになるでしょう。

大人の愛着障害の原因

大人の愛着障害は、幼少期に不適切な環境や養育者との関わりで育ったため、安定した愛着が形成されずにパーソナリティに影響をうけたことが原因です。

さらに原因を分類すると、次の4種類があります。

幼少期の不満乳幼児期の親との間で深い絆や信頼関係が築かれなかったことが原因。守ってくれる人や頼れる人が不在で、安心感が持てなかった生い立ちが影響。
虐待やネグレクト虐待やネグレクトが当たり前の環境で育った人は、同じような状況を自身の子供に対して再現しやすい。
愛着障害の連鎖親が愛着障害だった場合、愛着障害が子供へ連鎖しやすい。遺伝というより環境要因で、子供の愛し方が分からない親を見て、自身の子育てモデルとしてしまう。
人生モデルの不在学校や地域のコミュニティなどで、憧れや目標とする人との出会いがなかったため、自分の表現のしかたや他人との関わり方がわからないまま育った。

大人の愛着障害は、あなたのせいではありません。

しかし、そのままにしておくと生きづらさが増してしまう可能性があります。負の連鎖を断ち切るためにも、カウンセラーなどの専門家に相談し、正しい対処方法を学ぶことが大切です。

大阪聖心こころセラピーでは、愛着障害の原因を探り克服するためのサポートを提供しています。ぜひ、カウンセリングをご検討ください。

大人の愛着障害の二次障害

大人の愛着障害をそのままにしておくと、下記のような二次障害が起こる可能性があります。

うつ病人との関わりが苦痛になり、社会とのつながりを断って引きこもることがある。また、気分が著しく落ち込み、気力を失って精神的にも肉体的にも不調になることがある。
不安障害自信のなさからある事柄や行動を何度も確認、繰り返しをせずにはいられない状態。しばしば生活に支障をきたす。
依存症アルコール依存やギャンブル依存、恋愛依存や性依存、インターネット依存など特定の物や行為に執着する。
境界性パーソナリティ障害親しい人には親切に接する一方で、少しでも気に入らないことがあれば、感情的に怒鳴りつけて相手を責め立ててしまう。些細なことで相手を否定、関係を断ち切ろうとするなど極端な考えを持つ。

愛着障害は大人になってから身体的な健康にも影響を及ぼすことがあり、心臓病や高血圧など、生活習慣病のリスクが高くなるとされています。

しかし大人の愛着障害による二次障害は、適切な治療や生活の工夫を取り入れることによって、症状を緩和することが可能です。

大人の愛着障害への誤解と真実

「大人の愛着障害」について知られるようになった一方で、誤解されている点もあるので注意が必要です。

誤解1:「母親のしつけが原因」

愛着形成は、幼少期の親との関わりが重要な役割を果たすと言われています。

しかし、それは母親に限られた話ではなく、父親や祖父母など子どもにとっての「主要な養育者」との関わりが重要です。たとえ幼い頃に親と離れ離れになったとしても、新たな環境で親身に関わり信頼できる存在に出会うことで、愛着は形成されるからです。

また、同じ親から生まれた兄弟姉妹で同じように育てられたにもかかわらず、一方だけが愛着障害を抱えるケースも存在します。確かに養育者の関わり方は重要ですが、しつけや子育て方法だけが原因とは言い切れません。さまざまな要因が複雑に絡み合い、愛着障害の発症に影響を与えると考えられています。

誤解2:「遺伝や性格が原因なので治らない」

愛着障害は、遺伝や性格によって決まるものではありません。

遺伝や性格は、生まれつき備わった個性であり、愛着形成に直接的な影響を与える要素ではないと考えられています。愛着は生まれ育った環境の中で、さまざまな人とのかかわりを通して形成されていくものです。

確かに、愛着障害が親から子へ、あるいは子から孫へと受け継がれていくケースが存在することも「大人の愛着障害の二次障害」で触れています。愛着障害を抱えた親が、子どもとの関わりにおいて無意識のうちに不適切な養育態度をとってしまうことが原因と考えられます。

しかし、このような悲しい連鎖を断ち切るために、大人の愛着障害を克服することは非常に重要だと言えるでしょう。

誤解3:「子供の頃から長年続いているので治らない」

愛着障害は、決して克服できない障害ではありません。

大人の愛着障害として長年苦しんできた方であっても、適切な取り組みによって克服することは可能です。人によって克服までに要する時間は異なりますが、幼少期に十分に得られなかった愛情やスキンシップ、信頼関係を築くためのコミュニケーションなどを補うことで、改善を目指すことができます。

愛着障害にお悩みの方は、正しい情報に基づいた適切な見立てと、専門家によるサポートを受けることが重要です。

大阪聖心こころセラピーでは、大人の愛着障害をはじめとした、さまざまな心の悩みを抱える方々に向けてカウンセリングを提供しています。1人で抱え込まず、まずはお気軽にお問い合わせください。

大人の愛着障害と発達障害の違い

愛着障害と発達障害は、症状が似ているため混同されやすく、精神科医や心療内科医でも区別がつきにくく判断がとても難しい場合があります。

大人の愛着障害と発達障害は、どちらも人間関係の構築に困難が生じることが共通点です。

しかし、愛着障害は後天的な関係性の障害であるのに対し、発達障害は先天的な脳機能の障害であるため原因が大きく異なります。

例えば、発達障害の自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠如多動性障害(ADHD)では、以下の症状が見られます。

  • 人への興味関心の欠如から周囲の人への関心が薄く、目の前のことに集中してしまう
  • 衝動的な行動から場をわきまえずに話し出したり、行動したりしてしまう

愛着障害の場合は、以下の特徴が当てはまる場合があります。

  • 人とのつながりを築きたいという意欲が育っていないため、適切な距離感がわからず親密な関係を築きにくい
  • 関係性の作り方や距離感がわからないため、コミュニケーションが上手くできず誤解が生じやすい

大人になってから愛着障害と診断される人は稀です。

しかし、愛着障害を起因とするような生きづらさを感じている場合は「愛着障害のグレーゾーン」と捉えられるでしょう。

愛着障害と発達障害は区別が難しい場合がありますが、原因や症状の理解によって適切な診断と治療が可能になります。満たされなかった思いや経験できなかったふれあいを補い、考え方の歪みの修正を行うことにより愛着障害を克服していきましょう。  

愛着の源は「安全基地」

愛着形成で重要となるポイントは「安全基地」です。

安全基地とは、安心できる人や信頼できる関係、すなわち「心の拠り所」のことです。子供の場合は母親などの愛情を注いでくれる人がこれに当たります。

このような「自分の居場所」や「なんでも話せる相手」など、人生における心の拠り所となる「安全基地」を持つか持たないかが愛着障害の改善に大きく影響します。

大人の愛着障害の場合、親に愛着形成を求めるのは現実的ではありません。むしろ、大人としてのメリットを活かすことを考えましょう。

居心地の良いコミュニティに参加する

大人になればコミュニティが広がり、自ら広げることもできます。信頼できる先輩や上司に憧れや目標を持つことで、自己肯定感や自尊感情が高まります。結果として職場や趣味、人間関係に安全基地を見出すことができるでしょう。

パートナーとの関係を深める

パートナーとの間に愛情や深い関係性、コミュニケーションを持つことで、安心や安らぎが生まれます。パートナーが安全基地の役割を発揮することで、愛着障害の改善が期待できるのです。

パートナーに愛着障害の特徴が見られる場合は、愛着障害を理解してサポートすることが重要です。そばにいて話を聞きスキンシップを大切にし、リラックスできる環境や関係を作ることで、相手の心の拠り所になりましょう。相手に寄り添うことで、愛着障害の症状が改善される可能性があります。

大阪聖心こころセラピーでは、個人のカウンセリングはもちろん、夫婦カウンセリングも行っています。今まで感じていた違和感を一度第三者を交え、ご相談してみてはいかがでしょうか。大人の愛着障害などの原因を見出し、解決・改善へとサポートさせていただきます。

大人の愛着障害改善への道

大人になってから愛着障害に気づき、改善したいと考える人は多いです。人付き合いが苦手、孤独感や空虚感、常に自信を持てないといった悩みを抱えてきた人に向けて、大人の愛着障害の改善方法について3ステップでご紹介します。

ステップ1.愛着障害の理解

愛着障害は、幼少期に十分な愛情やスキンシップ、コミュニケーションを受けられなかったことで起こる心の問題です。虐待やネグレクトだけでなく、親からの無関心やコミュニケーション不足も原因となります。

ステップ2.安全基地の確保

愛着障害の改善には「安全基地」と呼ばれる、信頼できる人との関係を築くことが重要です。パートナーや友人など、安心して自分自身をさらけ出せる相手とのコミュニケーションやスキンシップを通して、幼少期に満たされなかった愛情を補い自己肯定感や自尊心を育むことができます。

ステップ3.存在価値の承認

自分の存在価値を認めてくれる環境や人との関わりも、愛着障害の改善に効果的です。職場や地域活動など、自分が認められ貢献できると感じる環境に身を置くことで、自信や意欲を高めることができます。

「存在価値の承認」について、タイプ別に対処法を紹介します。

人付き合いが苦手な人信頼できる人と少しずつコミュニケーションを取る練習から始めることが大切。
孤独感や空虚感を抱えている人恋人やパートナーだけでなく、友人や家族との時間を大切にするとよい。
常に自信を持てない人自分の得意なことや好きなことに目を向け、小さな成功体験を積み重ねることが重要。
安全基地を見つけられない人カウンセラーやセラピストなどの専門家に相談するとよい。

大人の愛着障害は、決して克服できないものではありません。自分自身を理解し適切なサポートを受けることで、改善することは十分可能です。一歩ずつ自分らしく歩んでいきましょう。 

安定した愛着と豊かな人間関係に向けて

大人になってから愛着障害に気づき、改善したいと考える人は多いです。不安や違和感、ストレスなどの原因がわからず、自分の考え方の問題だと誤解している方も少なくありません。

大人になると、仕事や人間関係などさまざまなストレスが重なり、愛着障害の影響が顕著になる場合があります。不安や違和感を覚えることが多くなった方は、カウンセラーに相談して、その原因を探ってみましょう。

ストレスにうまく対処できない人は、ストレス解消法を学んだりリラクゼーションを取り入れたりすることで、心身の健康を維持できます。

人との付き合い方がわからない人は、カウンセラーやセラピストなどの専門家に相談して、適切なコミュニケーション方法を学びましょう。

人生は、あなたが思っているよりもずっと生きやすく、楽しいものになるはずです。身近な人々は、あなたが想像している以上にあなたを愛しています。

愛着障害だからといって、人を愛することができないわけではありません。愛し方がわからないだけなのです。改善することでパートナーも子供も、そしてあなた自身も、納得のいく形で愛を与えられるようになるでしょう。

大阪聖心こころセラピーでは、愛着障害などの問題をカウンセリングや心理技法により、相談者の心の回復を目指します。

今ある不安や苦痛から早期に解放され、愛にあふれる生活が送れるように、一緒に豊かな人間関係を育んでいきましょう。

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